母親と娘が同居していたケースです。娘は精神疾患(統合失調症)でした。母親が認知症になったので、区からの依頼で私が後見人になりました。

 娘、息子が精神疾患で、親が虐待を受けているという相談事例は結構あります。
娘、息子は精神疾患があるので、たいてい働いておらず、親の年金に依存して、同居している、というパターンです。
こういう状態で親が認知症になってしまうと、お金の管理を問題の娘、息子がやり始め、おかしなことになる、というケースが意外と多いです。
精神疾患といっても常時おかしい訳ではなく、細かい計算ができたり、年金を自分で好きな様に使ってしまうこともあります。

 基本的に、虐待については自治体である市町村(東京では区)が責任を負っています。
児童虐待は児童相談所、高齢者虐待は地域包括支援センター(包括と略称で言われます)という介護保険法で定められている組織が担当しています。
地域包括支援センターは、区の直営もありますが、ほとんどはNPOや社団法人などへの委託で運営されています。

基本的な業務は介護要望の受付や、介護相談です。
この他に、権利擁護といいまして、生活困難な方を助けたり、虐待を受けている人を救う、といったことをしています。

 このケースもお母さんが認知症になった後、娘に介護放棄(虐待の一つですね)、ご飯を食べさせてもらえない、病院に連れて行ってもらえないといった状況でした。
しかし、訪問調査しようとしても娘に自宅に入るのを拒否される状況が続いていて、母親が危険な状態になってしまい、最終的に警察が出動して即入院という事態になりました。
褥瘡(床ずれ)がひどく、もう少し遅かったら、命が危ないという状況でした。なんとか命は取り留めたものの、結局3ヶ月ほどで亡くなられました。

 入院された時に、お金の管理ができないということで成年後見人の区長申し立てが行われ、私が成年後見人になりました。
市町村・区の長も、後見人の申し立てできます。普通は親族が申し立て人になりますが、親族がいない人もいますし、虐待などで申し立てない人もいますので、そういった場合には、自治体の長が申し立てます。

 このような経緯で、私が後見人になりました。
預貯金はあまりなかったのですが、自宅が持ち家で病院代も払えなかったので、娘には生活保護で病院に入ってもらい、家を売ろうと考えました。
娘とは話し合おうとしても、交渉が難しい状態でしたので、裁判で強制執行(退去)させようと思っていたんですが、その前にお母様が亡くなられてしまったので、家の売却はできませんでした。

 実はこのケースでは、近くに弟が住んでおり、もう1人アメリカに行っている妹もいました。
妹は連絡がとれなかったので、相続人の弟に引き継ぎをしたのですが、母親の葬式をだすのも嫌だと言う事でした。
納骨の手続きはイヤイヤしたようですが、どうも母親から虐待を受けていたようです。
ひどい敵対心を持っておられて、成年後見人としての報酬を預貯金から差し引かせて頂いた時も、かなり文句を言われました。
(成年後見人の報酬は法律で定められているものです)。

姉は相続協議に参加できるかどうかもわかりませんし、早めに母親の成年後見人を建てて不動産の処理などを終わらせていれば、遺産相続もスムーズに進められたと思います。