建設会社を経営していたAさん。
 
先日、倒産(破産)したのに、
 
未だに「ベンツ」を乗り回しています。
 
その「ベンツ」は倒産前からAさんが愛用している車でした。
 
 
こんなこと、あるのでしょうか?
 
( その答えは、この記事の最後に書いてあります。)
 
 
自動車がないと困る。
 
っていうこと、ありますよね。
 
 
都内なら、自動車がなくても生活できますが、
 
地方ですと、自動車がないと生活が成り立たないことが多い。
 
 
とはいえ、倒産、破産となりますと、
 
資産を全部吐き出さないといけません。
 
 
だから、持っていた自動車も手放さないといけない。
 
そう思っている方が多いと思います。
 
 
原則は、確かにそうなのですが、
 
いろいろ工夫することで、
 
倒産(破産)しても、
 
自動車を使い続けることができる場合があります。
 
 
まず、オートローンが残っているか、オートローンがないかで
 
法律上の処理が大きく変わります。
 
 
まず、オートローンが残っているとき。
 
 
この場合は、通常、自動車の名義が
 
ローン会社か自動車販売業者の名義になっています。
 
 
これはローンの担保です。
 
「所有権留保」と言います。
 
 
つまり、ローンを全額支払うまでは、
 
自動車の所有権はローン会社のものなのです。
 
 
ですから、オートローンが残っているまま、倒産(破産)すると、
 
所有者であるローン会社に返さなければいけなくなります。
 
 
倒産してから数週間後にローン会社から連絡があり、
 
自動車引取業者が自動車を取りに来ます。
 
その業者に鍵を渡して、「はい、さようなら」
 
となります。
 
 
ここで、自動車を使い続ける方法があります。
 
 
ひとつは、ローンの名義を他の人に替わってもらう方法です。
 
 
その人がローン(借金)を引き継ぐ形になります。
 
法律では「債務の引受」と言います。
 
 
その後のローンの返済を誰がするのか。
 
その人がするのか、倒産した人がするのか、
 
その辺は話し合いで決めます。
 
 
ただ、法律的には、あくまで名義を引き継いだ人の借金です。
 
払えなくなった場合に、請求されるのは、その人です。
 
 
この方法が実現できれば、自動車を使い続けることができます。
 
 
しかし、簡単ではありません。
 
 
ローン会社によっては、名義変更(債務の引受)を一切認めないこともあります。
 
 
また、名義変更に応じるローン会社でも、
 
名義を受ける人について、厳しい審査を行います。
 
 
基本的には、返済できる能力=資力があるのかの審査です。
 
こちらをクリアしないと、名義変更できません。
 
 
逆にいえば、ローンを返済できるだけの資力のある人を
 
探して、頼まないといけないのです。
 
 
頼まれる側も心配ですよね。
 
「おれがきちんと返済するから、名義だけ貸してくれ」と言われて、
 
オートローンの名義人を頼まれたとしても、
 
倒産する人を信用できるかどうか。
 
できたら断りたいと思う人が多いでしょう。
 
 
名義変更(債務の引受)に応じてもらえる人を探すのも、一苦労です。
 
 
わたしも何件かこの方法を実行し成功しましたが、
 
親族、例えば倒産する人の兄弟や両親などが多いですね。
 
家族の頼みだったら、断れないといったところです。
 
 
ローンの名義変更のほかに、
 
ローンの残高が小さいときは、全額一気に払ってしまう。
 
という方法もあります。
 
 
この方法は、倒産した後、破産した後はできません。
 
破産後は、返済は一切禁止されるからです。
 
それどころか、実際には破産の準備を始めた時点から、
 
「偏波弁済」といって、特定の債務を返済することが禁止されます。
 
 
ですから、この方法をとるときは、
 
事前に弁護士に相談してください。
 
 
さらに、ローン残金を一気に返済すると、
 
オートローンがない自動車と同じになります。
 
その自動車の時価の金額によっては、
 
結局、手放さなければいけなくなりますので、
 
ご注意ください。
 
 
次に、オートローンがない自動車についてです。
 
 
この場合は、倒産(破産)する人の資産ですから、
 
基本的には、手放す必要があります。
 
 
債権者のために売却処分されて、債権者への配当などの原資になります。
 
 
それが原則です。
 
 
ただし、個人所有の自動車については、20万円ルールが適用されます。
 
 
破産手続では、20万円以下の財産は、
 
売却処分しても、債権者への配当としては小さい。
 
それに倒産(破産)する人の生活基盤も残す必要がある。
 
そのため、20万円以下の財産は、倒産(破産)しても、
 
手元に残すことができるのです。
 
 
自動車もこのルールが適用されるので、
 
自動車が20万円以下であれば、そのまま手元に残して、
 
使い続けることができます。
 
 
20万円以下の自動車なんて、ポンコツか、めちゃ古い車だけ?
 
と思うかもしれません。
 
 
ですが、それは中古車販売店での買値の話です。
 
破産手続で問題になるのは、売値。
 
車買取業者からいえば、買取価格です。
 
 
無料で査定してくれる買取業者が多いので、
 
できれば2社の査定をしてもらいます。
 
 
査定の額は、思った以上に安いです。
 
20万円以下になることも、しばしばです。
 
 
税務上、自動車は5年間で償却してその後は価値なしとみなします。
 
ですから、初年度登録から5年程度経った自動車は、
 
ほとんどが20万円以下の評価となります。
 
 
ちなみに、トヨタのプリウスは、意外に値下がりしないようです
 
燃費が抜群にいいですからね。
 
古くても、買いたい人が多いということです。
 
プリウスの場合は、査定額が20万円を超えることが多いかもしれません。
 
 
ぶっちゃけ、裏のことを話してしまいますと、
 
査定業者さんによっては、多少のさじ加減をしてくれます。
 
「安めに査定して」と頼んでもらうことがあります。
 
 
ここまでが20万円以下の自動車についてでしたが、
 
誤解してはいけない点は、
 
20万円以下の自動車を残せるのは、
 
個人所有の自動車だけということです。
 
 
逆にいうと、会社所有の自動車は、
 
20万円以下でも、残せません。
 
 
なぜか?
 
 
会社は破産手続によって消滅してしまうからです。
 
 
持ち主である会社が消滅してしまう以上、
 
20万円以下であっても、自動車は残せません。
 
売却して処分する必要があるのです。
 
 
ちなみに、会社の資産は、自動車にかぎらず、
 
すべての資産を換金して、債権者への配当資金にします。
 
 
で、自動車を残したまま、破産手続に入ってしまうと、
 
破産管財人という人(裁判所から選任された弁護士)が
 
自動車を売却します。
 
 
自動車買取業者などに売却してしまうため、
 
そうなると、自動車を使用し続けることができません。
 
 
そこで、社長個人や家族が、会社から自動車を買い取ってしまう
 
という方法もあります。
 
 
この買取にも時期によって2つに分かれます。
 
 
まず、ひとつ目は、自動車を残したまま、会社の自己破産を申し立てて、
 
その後に、破産管財人から、その自動車を買い取る方法です。
 
 
破産管財人も自動車を処分するのは面倒などで、
 
関係者が買い取ってくれるのは、歓迎です。
 
 
ただ、誰に売却するかは、破産管財人が決めることなので、
 
必ず買い取れるというわけではありません。
 
 
金額も管財人次第です。
 
 
そういう意味で、買い取れないリスクもありません。
 
 
「希望額で買うことができなくてもいい」という場合は、
 
この方法でOKです。
 
 
しかし、確実に今まで使っていた会社名義の自動車を
 
買い取りたいという場合には、
 
会社の自己破産を申し立てる前に、
 
会社と個人の間で売買契約書を結んで、
 
名義を変更してしまいます。
 
 
ここで注意したいのは価格と支払方法です。
 
 
破産申立て直前でも、価値に見合った金額であれば、
 
売却することもできます。
 
 
※注 時価相当額なら、何でもかんでも売却してよいというわけではありません。
 
この辺は難しいので、弁護士にご相談ください。
 
 
逆に、不当に安く売却していると、
 
後に現れる破産管財人がそう判断したときは、
 
自動車を返せ
 
とか
 
差額を払え
 
などと言い出す可能性があります。
 
 
だから、複数の業者から、自動車の査定をとって、
 
売却代金の額が安くないことを証明しておく必要があります。
 
 
次に、支払方法です。
 
 
現金で支払うのは避けます。
 
 
なぜか?
 
 
あとで管財人から、本当に支払ったのか、疑われるからです。
 
 
つまり、偽装売買で、
 
会社名義の自動車を個人名義にしたけれども、代金は払っていない。
 
ということになれば、
 
破産管財人としては、会社のために(債権者のために)、
 
自動車を返せ。
 
と言わなければいけないのです。
 
 
ですから、代金の支払いは、かならず振込にします。
 
 
買主である個人の名前で、会社名義の銀行口座に振り込みます。
 
そうすれば、会社に代金が支払われたことを、通帳で、
 
確実に証明できます。
 
 
会社名義の通帳に振り込まれた代金が、
 
払い戻されて、その後にどうなるのか?・・・
 
もちろん、不正に使ってはいけませんが、
 
有効活用することは可能です。
 
 
ということで、
 
私としては、会社名義の自動車は、自己破産を申し立てる前に、
 
売却してしまうことをお勧めしています。
 
 
では、個人所有の自動車に戻りますが、
 
残念?ながら、20万円以上の査定になってしまった自動車を、
 
使い続けるにはどうするか?
 
 
この場合も、査定額に近い金額で、誰かが買い取ります。
 
 
破産する所有者本人以外であれば、誰でもOK。
 
 
ただし、オートローンは組めませんので、
 
代金相当額をキャッシュで用意できる人になります。
 
 
この場合も、あとで現れる破産管財人に
 
安すぎると言われないように、
 
複数の業者から査定をとっておく必要があります。
 
 
それと、代金の支払いは、やはり、
 
会社名義の銀行口座に振り込みます。
 
 
この方法、金額には制限はありませんが、
 
何十万円、それこそ100万円を超えるようであれば、
 
買い取るのはお勧めできません。
 
そんな資金があるなら、
 
それは別の費用にあてて、
 
車が必要ならば、10万、20万円の安い中古車を買いましょう。
 
 
わたしは、何度も言っていますが、
 
倒産(破産)は「終わり」ではありません。
 
 
ゼロから始める、第二の人生のスタート、なのです。
 
 
だから「倒産」は明るいのです。
 
 
「明るい倒産」で、みなさんの再出発を応援します!
 
 
※冒頭のAさんは、なぜ倒産したのにベンツを使い続けられたのか?
 
Aさんは会社のベンツを買い取った。
 
のではありません。
 
 
実は、このベンツ、もともとAさんの奥さんの名義だったのです。
 
 
破産手続では、破産者の財産が対象になりますが、
 
逆に、破産者以外の財産は、対象になりません。
 
たとえ、同居している家族の財産であっても、
 
法律上は他人の財産なのです。
 
 
「明るい倒産」弁護士 大 竹 夏 夫
 
 
※ちなみに、「明るい倒産」は登録商標です。