日本経済新聞(日経新聞)は、2013年6月4日の夕刊で、次のような記事を掲載した。

 

  「成年後見、信託で財産保護 全員に対象拡大 」という見出し。

  成年後見を受ける人(成年被後見人)が、自分の財産を保全するため、

  信託銀行の「後見制度支援信託」サービスを利用できるようになった。

  最高裁判所(最高裁)と日本弁護士連合会(日弁連)が、

  「後見制度支援信託」の対象を被後見人全員に拡大することで、合意した。

 

しかし、次の2点で誤報がある。

 

ひとつは、「後見制度支援信託」の対象を被後見人全員に拡大するという点。

現在の運用もまだ試験段階であり、弁護士などの専門職が後見人になる場合は、

「後見制度支援信託」は適用されない。

 

もうひとつは、日弁連が合意したという点。

わたしは、日弁連の高齢者・障害者委員会の委員も務めているが、

日弁連が「後見制度支援信託」の拡大を合意したという事実はないと認識している。

日弁連は「後見制度支援信託」には、基本的に反対の立場である。

 

確かに、後見人が本人(被後見人)の財産を使い込むケースは少なくない。

最高裁の調査でも、2010年6月からの10か月間で合計184件、

被害総額は18億円以上と判明した。

 

恥ずかしいことだが、後見人なった弁護士が本人(被後見人)の財産を

使い込んで逮捕されるというケースがたびたび起きている。

 

そこで、本人(被後見人)の財産を信託銀行に預けさせて、裁判所の指示がないと、

その財産を引き出せないようにする

という制度が登場した。

これが「後見制度支援信託」である。

これを考えたのは、最高裁である。

 

確かに、この制度を使えば、後見人による使い込みは防げる。 

 

しかし、本来であれば、自宅を処分するときに家庭裁判所の許可が必要になるだけで、

あとは後見人が自らの判断で本人の財産を管理できる。

それは権利であり、後見人・本人にとって自由というメリットでもある。

 

このような権利・自由を法律に基づかないで、奪ってもいいのだろうか。

しかも、信託銀行は手数料をとる。

その負担は、本人(被後見人)が負う。

 

本来、後見人の監督は家庭裁判所の仕事である。

それができないから、信託銀行に任せる。

しかもその費用は本人(被後見人)に負担させる。

 

信託銀行からすれば、最高裁判所が考えてくれた

新しい仕事(収入源)となった。

 

だから、納得できないのである。

 

日経新聞では、被後見人のためのサービスだというが、

むしろ後見人に対する規制なのである。

 

というわけで、弁護士会は反対を表明しているが、

現時点では、各都道府県において、順次、試験的に

親族が後見人の場合に採用され、運用されている。

 

被後見人全員に拡大する予定はまだない。

 

   老活コンサルタント(弁護士)大 竹 夏 夫